すべては一杯のコーヒーから 新潮社
何かコーヒーに関する本が読みたいと思って買ってみた。
タリーズジャパン創業者が、創業の経緯やその前後の経験を書いた。
サブタイトルは"Short Latte, Tall cappuccino, and Grande Passion"
著者でタリーズジャパン創業者の松田公太氏は5歳から大学入学までをほとんど海外で過ごした帰国子女。ボストンで通りがかりに飲んだ一杯3ドルもするテイクアウトのコーヒーの味が忘れられず、「スペシャルティコーヒー」の本場シアトルに飛び、その中でも一番の「タリーズ」と単身直接交渉して、タリーズジャパン創業にこぎつける。
語学のハードルがないといっても、気の遠くなるような話。夢や目的のために徹底的に情報を集め、それをかなえるための協力者を紹介してくれるなんていないから、自ら人脈を切り開いて、一から人間関係を作る。そういうことができる人に強く惹かれる。前に大学で大塚先生の話を聞いたとき感じたものに似ている。
ただコーヒーを飲みたければ、一杯100円や180円でコーヒーを出すチェーン店はいくらでもある。それが、タリーズは290円~。10年前には日本にはほとんどなかった「スペシャルティコーヒー」というポジションをスターバックスとともに、日本に定着させた。
また、キッチンの裏側や、タリーズで扱う個々の商品へのこだわりもところどころで触れられている。
日本で飲食業界で起業するという夢をかなえるために背負ったリスクは大きい。銀行員という安定した立場(年収1000万超)を捨てて、7000万の借金を背負った。失敗したらコンビニでバイト(時給850円)して借金を返す覚悟であったという。
彼のように能力と「Passion」のある人が大きなリスクを背負い、莫大な時間と労力と割いてくれたお陰で、タリーズに行けばいつでもあのコーヒーを味わうことができる。「本日のコーヒー¥290~」は決して高くはないと思う。